冷徹なカレは溺甘オオカミ
異動して2週間も経つと、業務内容や同僚たちの人となりもなんとなく把握できる。

仕事に関して言えば名古屋支店にいた頃と同じ営業ということもあって、特に心配はなかった。


職場の人間関係も、今のところ良好。

そもそも自分はあまりデリケートな性格でもないので不安に思うほどではなかったけれど、やはり同僚とはうまくやれるに越したことはない。

中でも同じ部署の矢野さんは、名古屋支店の森野さんを彷彿とさせるくらい俺を構いたがる。

どこにでも物好きはいるものだなあと、特に反抗もせずランチや飲みに連れ回される日々だ。



「印南くん、それが終わったら、また覚えてもらいたい作業あるから声かけてね」

「はい」



そして仕事上1番関わることが多いのが、隣りの席の先輩・柴咲さん。

この短期間で、十分にわかった。彼女は徹底して、ガードが堅い“イイ女”だ。

仕事が速くて、近寄りがたい雰囲気で、おまけに日本人離れしたヨーロッパ系ハーフ顔美人。

文句なしに、こういう人のことを高嶺の花というのだろう。


きっとこんな人だから、あんなに派手な噂が付きまとうんだと思う。

名古屋支店で忠告された話以外にも、ここに来てから彼女に関するいろいろな噂話を聞く機会があった。

中には本気で耳を疑うような話もあるから、俺自身全部を鵜呑みにしているわけではないけれど。

それでもまあ、彼女ならありうるかもと、そう思わせるような絶対的な壁は、たしかに俺たちと彼女の間にはあるように思える。
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