冷徹なカレは溺甘オオカミ
淀みなくキーボードを叩いていた手をキリのいいところで止めて、小さく息を吐く。

パソコン作業は嫌いじゃないけど、どうにも肩が凝って困る。ぐるぐると両肩を動かしながら、何気なく右隣りへと目を向けた。



「………」



そこにいるのは、当然ながら同じく仕事中の柴咲さんで。

凛と背筋を伸ばしてパソコンに向き合うその姿は、まさしく“デキる女”そのものだ。

ひとつにまとめて左肩に流した髪の、うなじにかかる後れ毛が色っぽい。

あの綺麗なうなじに噛みつくことができるんだったら、一度くらい遊びで食われたって別にいいんじゃないかな、と真面目に思う。

……いや、よくないだろ。仕事中に何考えてんだ俺は。

こんなんだから、義理の姉である鈴音にも「ダイくんってむっつりっぽいよね」とか真顔で言われるんだな。自分ではだいぶオープンなつもりなんだけど。


ぼんやりしょうもないことを考えながら、それでも視線は柴咲さんから離さないでいると。

真剣な眼差しでパソコン画面を見つめていた彼女が、不意に目を閉じて軽くうつむいた。

そして。
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