冷徹なカレは溺甘オオカミ
「……しゃわー……」

「シャワーです」



こくり。神妙な面持ちで彼がうなずく。

そんな印南くんの反応で、さらにせわしなくなるわたしの心臓。

無意識に、ごくんと唾を飲み込んだ。


……いよいよ、なんだ。

いよいよ、わたし──……。



「あ、あのね印南くん、聞きたいことがあるんだけど」

「なんですか?」



聞き返しながら、しゅるりと慣れた手つきで印南くんが自分のネクタイを緩めた。

女子ならばときめく鉄板なその動作。わたしもまんまと胸を高鳴らせてしまいつつ、そっと彼を見上げた。



「えーと……わかってると思うけどわたしこういうの初めてだから、いろいろと勝手? マナー? 要領? とかがわからなくて、戸惑いまくりなんですけどね」

「はい」

「あの、とりあえず……こういうとき、普通メイクって落としてもいいものなの?」

「………」



こちらを見下ろしたまま、固まる印南くん。

とたんに後悔して、真っ赤な顔でうつむくわたし。

だけどすぐ、彼が口を開いた。



「……まあ、それは、人それぞれだと思いますけど。メイクして着飾ってる姿でしたいって男もいれば、むしろすっぴんが燃えるって奴も普通にいますよ」

「そ、そうなんだ……」

「俺は別に、どちらでも構わないですけど」
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