シャッターの向こう側。

勇気……もしくは迷子

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 あのキャンプから数週間が経った。

「あら。すっかり小麦色ちゃんね」

 加納先輩の声に、パソコン画面から顔を上げる。

「そんなに日焼けしてますか? コンビニの日焼け止めじゃ効かないのかな~」

 最近、野外の仕事も多かったから、一生懸命日焼け対策したのに。

「コンビニで買った日焼け止めもいいのがあるけどね。C社のはかなりいいわよ」

 ……それは、先輩がキャンペーンをしていたアレですかね。

「C社の回し者がいる~」

「おばかさん。良いものだから薦めてるんじゃないの」

「だって、高いんだもん」

「女はお金がかかるものなの! まだ若いからそんな事言ってるけど、若いうちからケアは大事なのよ? ね? 宇津木くん」

 ひょいっと、先輩は宇津木さんを見る。


 てか、宇津木さんは何故にそんなに無表情なんだ?

「俺に言われてもな。全く解らん」

 詳しかったら、逆に怖いね。

「というわけで、神崎ちゃん借りていいかしら?」

 何が〝というわけで〟なんだか解らないんですけどっ!?

「スミマセン、先輩。私は貸し借りするものではありません」

「まぁ、堅いことは言わない」

 言いたくもなりますって。

 半眼になって先輩を見ると、軽やかに笑って頷いてるし。

「で、神崎ちゃんは手は空いてる? 百貨店から秋の味覚祭の広告なんだけれど」

「あ。また緊急事項ですか?」

「お前もいい加減にしろよな」

 呟いた宇津木さんに、先輩は無言でげんこつ。


 ひぃ……っ!

 ゴンって音がした、音が!!

「違うわよ。ちゃんと〝秋の〟って言ってるでしょ。撮影予定は来週よ」

 自信満々に言ってるけど、それでもずいぶんと期間が短いですが。

「今回は私のミスじゃないわよ! 向こうの広報がミスったのよ!」

 まぁ、この時期は有りがちだね。

 季節の変わり目にはイベント組みたがるのが百貨店だし、コスメはスケジュール的にはしっかりしてるけど……

 来週は……そんなに仕事も混んでなかったと思うな。

「加納さ……」

「ピヨは駄目。他に回せ」


 隣から聞こえた声にポカンとした。
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