シャッターの向こう側。
 てか、なんで宇津木さんが答えるの~!?

「今週中の仕事が2件、来週末までには3件の外周り。いくらなんでも、オーバーワーク」

 と言うかですね。

「……何故、私の抱えてる仕事をご存知でらっしゃるんです」

 全部が全部、宇津木さんとの仕事じゃないのに。

「どっかのヒヨッコじゃないからだろ」

 パソコンを見ながらニヤニヤ笑う宇津木さんを思わず睨む。

「じゃ、宇津木さんはニワトリですか」

「意味が解らん」


 私にも解らんけど。


「とにかく、お前は5件以上抱えると、勝手にオーバーワークするだろ。だから引き受けるな」

 そりゃ、確かに今週も来週も外周りだらけで移動も大変だけど、やって出来ない事もないと思うな。

 むぅ……としたら先輩は〝大丈夫だから〟なんて言って去って行ったけど、


「5件がオーバーワークですかね」

「以前の様に適当なら……とにかく、今はさせない方がマシ」


 なんじゃ、させない方がマシって。

「だいたい、秋のコンテスト近いんじゃないのか?」

 言われてポカンとした。

「もしかして、秋に開催されるフォトコンのお話でしょうか?」

「お前、デカイのしか応募してないだろ」

 ちらっと横目で見られて眉をしかめる。

 なんですか、その〝身の程知らずが〟とでも言いたそうな目は。

「……あれは、諸事情がありまして、応募しないんです」

「何故」

「家庭の事情がありまして」

「だから何故」

「いやだな、宇津木さん。身内の事をペラペラ話す人はいないじゃないですか」

「フォトコンにどうして家庭の事情が絡むのかが解らん」


 ……まぁ、そうでしょうね。


「祖父ちゃんも出すからです」

「お前の祖父さん、生きてるんだ」


 だから勝手に殺すな!!


「あんな高そうなカメラもらってたから、てっきり遺品なんだと思ってた」

 ん?

「よく気付きましたね~」

「こういう仕事をしてるとなぁ。自然と目が養われるよな」

 宇津木さんは呟いて、パラッと私に一枚の名刺を差し出して来た。
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