シャッターの向こう側。
『それで何故、お前は夜の23時も過ぎてから俺に電話してるんだ?』

 とっても不機嫌な声に、一瞬だけ躊躇。

 えーと、それはですね。

 佐和子に電話したら〝ありがとう! 助かったわ!〟などと、何故かテンパった声で電話を切られ。

 もちろん、あんな感じに別れた坂口さんに電話する勇気があるはずもなく。

 加納先輩は留守電。

 祖父ちゃんは21時には寝てるだろうし、両親は都会の地理に詳しいとは思えない。

 学生時代の友人とも、卒業してからは連絡なんてとってないし。

 ある意味薄情者なんだな、私。

 なんて感心しつつ……


 とすると、残りは冴子さんか宇津木さんの番号しか知らない……


「と、そういう訳なんですよ」

『まったく解らん』


 そうでしょうとも。


「とにかく、道に迷いまして」

『はぁ? いつも通ってる道で、どんな器用な事して迷ったんだよ』

 お説、ごもっとも。

「レンタカーを借りまして、ちょっとプラプラ星を見に来ましたら」

 なんか田舎道だし、蛙は大合唱しているし、コンビニはないし、民家は寝静まっているし……

『方向音痴がぷらぷらレンタカーなんぞ借りるな!』

「方向音痴じゃないです! ただ、来た道を忘れただけです!」

『それを方向音痴と言うんだ、馬鹿!』

 返す言葉もありません。

 携帯の向こうで小さな溜め息が聞こえ、カタカタと何かの音が聞こえた。

『まぁいい。周りに何か標識はあるか?』

「あれば苦労しません」

『じゃ、カーナビは?』

 カーナビ?

『レンタカーならついてるだろ』

 ぁあ!!

「あ、ります」

 ハンドルの左側にデデーンと、画面が付いちゃってます。

『それで、借りたレンタカー屋の住所とか検索出来ないか?』

 紐付きのリモコンを見つけ、それをいじる。

「あ。ありました」

『どこの営業所だ?』

「はい、S区のレンタカー屋さんです」

『そうか。じゃ、覚悟して帰ってこい』



 ……何が?
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