シャッターの向こう側。
「あれだよな」

 ポツリとした呟きに、写真を見たままの宇津木さんを眺めた。

「あまり考えないだろ」

 何が?

 って、私が?

 喧嘩売られてる?

 頭からっぽとでも言いたいのか!?

「目に見たありのままで動くだろ」

「………?」

 写真の事?

「素直って言うか。馬鹿正直って言うか」

 ……うーん。

 素直は嬉しいけど、馬鹿正直には頷きたくないなぁ。

「これ撮ったの最近?」

「え? あ。はい」

「じゃ、少し安心した」


 何が……。


「最後の方は、お前らしいじゃないか」

 視線が合って、一瞬ドキリとした。

 ……って、

「そうですか?」

「楽しそうなのと、そうじゃないのが入り乱れてるが……。これ、こないだのキャンプの時のもあるだろ?」


 写真を返されて、ふと視線を落とす。

 晴れた日の空。

 光を反射する海。

 足跡を撮った砂浜……

 確かにこれは、キャンプの時の写真。


 それから、残っていたフィルムを使って最近撮ったもの。


「楽しそうなのと、そうじゃないの……ですか」

「ぱぱっと見た感じで分けると結構面白いぞ? お前は目が悪いって訳じゃないんだから」

 宇津木さんはそう言って、パソコンに向き直った。


「…………」


 見た感じで分ける……か。

 ちょっとやってみよう。

 まずは好きか嫌いか。


「その前に、タイムカード押せよ?」

 ……あら。

 あたりの人影もまばらになったオフィスで、ちらっと苦笑。

 怒られる前に押しておこう。

 ピッと社員カードをリーダーに通して、ついでに給湯室の冷蔵庫から予備のペットボトルを取り出して戻る。

 それを宇津木さんのデスクに置いてから椅子に座った。

 さて、はじめますか。

 と、写真を見始めた時、

「ピヨ?」

「あい?」

 宇津木さんの声に上の空で返事をする。
< 161 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop