シャッターの向こう側。
***


「お帰り~」

 にこやかな有野さん。

 テキパキと仕事をこなす撮影班の皆様。


 うし!


 お仕事お仕事。


「お騒がせしました」

 頭をかきつつへらっと笑うと、有野さんは眉をあげて首を傾げた。

「あれ。どうかした?」

「はい?」

「宇津木となんかあった?」

 は、はい?

「お前。また神崎さんいじめた訳?」

 有野さんは背後にいる宇津木さんを見て、軽く睨んだ。

「……人聞きの悪い」

 ボソボソと言う宇津木さんに、有野さんが疑いの視線を送る。

「そう思うなら、言動を直せといつも言ってるだろうが」

「同感です」


 と、背後から殴られた。


「…………」

「お前ね。女の子は殴るんじゃないよ」

「手加減ぐらいしてます」

 そう言う問題じゃないと思う。

 キッと振り返ると、涼しい顔で宇津木さんは機材を運んでいる人たちの方に行ってしまった。


「……ねぇ。神崎さん」

 痛む頭を押さえつつ有野さんを見上げる。

 ……何でそんなに複雑そうな顔をしてるんですかね?


「宇津木、あんまり変わってるようには見えないんだけど」

「そんな事ないです。たまに気味悪いくらい優しいんです」

「は……?」

 さっきだって、妙に優しかったし。

 以前にはなかったことだよね。


「ま、いいです。今は仕事中なんですから」

「……うん。まぁ、そうなんだけどね」

「どんな写真が良いですか?」

「ん? 宇津木に聞いてない?」

「いつも通り、好きに撮れって言われてます」

 カメラをバックから取り出しながら言うと、有野さんは考え込むように腕を組む。

「うーん。君への指示は宇津木に任せてるんだけどなぁ」

「つまり、ワザとその指示を出してくれてないんですかね?」

 今回は書類もなかったんだけど。

 有野さんは宇津木さんの方を見て、つられて私も見た。
< 188 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop