シャッターの向こう側。
「宇津木。フォトグラファーへの指示はどうなってるんだ?」

 機材の班に交じって宇津木さんが振り返る。

 視線が合うとすっと背筋を伸ばし、宇津木さんはニヤッと笑った。


 ……これは。


「またですか」

「は?」

 有野さんの声を無視して考える。

 今回のコンセプトは確か『春のウェディング』ね。

 春のイメージ。

 それからウェディングでしょ。

 花咲きほこる春。

 イメージは始まり。

 幸せの始まり。


 ……かな?


「コンセプトを理解したと仮定して、好き勝手やらせてもらいますね~」

「は? えぇ?」

 歩き出したら、有野さんは驚いたように声をかけてきたけど、無視。


 あの厚顔男め、また好き勝手撮ればいいという態度に出たわよね。

 つまり、また〝まとめるのは俺の仕事〟とでも言いたいんでしょうよ。


 ムカつく!!


 いつかその鼻っ柱を追ってやりたいっ!!


 ザクザクと近づくと、モデルのお兄様お姉様はちょっとだけ引いたけど、気にせずに笑顔を振り撒く。


「少しお話しても良いですか~?」

「は、はぁ……」

 気取ったモデルにじゃ話にならない。

 作りモノの幸福を見たい訳じゃない。

 プロの俳優さんなら、自然に出来るかも知れないけど……


 モデルさんは、モデルさん。


 ……なら。


 引き出せばいい。


 しばらく話をしながら、モデルさん達を思い切り笑わせてシャッターを切る。

 シャッターの音に反応しなくなればシメタモノだわ。

 自然に出た笑みで、花嫁衣装のお姉様がタキシードのお兄様を見る。


 うん。


 いい表情が出て来た。


 会話をしながらアングルを決め、シャッターを切る。

 ファインダー越しに見えるのは一組のカップル。

 緑溢れる背景に、幸せ溢れる二人。


 ふっと、影が差したのでファインダーから顔を上げた。


 空……?


「……あ」

「え?」

 つられてお兄様お姉様が空を見た。
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