シャッターの向こう側。
 山の天気は変わりやすい……って言うけど。

 ちょっとした高台も一緒だね。

 曇り空……と、言うより、暗雲が近くに見えるし。

 溜め息をついて視線を下ろすと、離れた所にいた宇津木さんと目が合った。

 ちょっとだけキョトンとして、それから空を見る。


「……有野さん。雨が降りそうです」

 その声に撮影班の皆も空を見上げ、慌てて機材をしまい始めた。

「あー……。天気が悪くなるとは聞いてないんだけどな」

「最近、突然雨が降るのが多いらしいですよ」

 ゲリラ雨とか、ゲリラ台風とか言うんじゃなかったかな?

 カメラをケースにしまい、防水性のバックに入れて車に乗せると、機材をしまう皆の所に手伝いに入る。

 まずは衣装をあまり汚すわけにもいかないから、モデルさんたちを先に非難させ、あらかた片付けが終わる頃、突然雨が降り出した。


「うひゃ~」

 イキナリずぶ濡れだわよ。

 身体に張り付いたシャツを引っ張りながら、忘れ物はないか回りを見回す。

 視界の端に、折りたたみの小さなチェアが見えた。


「ピヨ! いいから戻れ!」

 でも……

 宇津木さんの声に振り返りかけ、


「ひゃ……っ」


 足が滑って、体勢が崩れた。


「きゃ────!!」


 絶対転ぶ!!


 転んだら痛い!!

 だって、枝やら根やらがたくさんあったも……


「…………」


 ……あれ?


 瞬きすると、視界の先に誰かの肩が見える。


「ナイスキャッチ」

 パチパチと拍手する有野さん。

 恐る恐る視線を上げると、木の幹にしがみついた形の宇津木さん。

「お前な。自分の足元くらい気をつけたらどうなんだ? ただでさえ、何もないところで転ぶ奴が」

「あ……ははははは」


 私、抱き留めてもらってる?

 ねぇ。

 抱き上げられちゃってる?


 もしかしなくても……?
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