シャッターの向こう側。
「それじゃ、地図を頼りにしますよね」

 何故か眼がますます鋭くなった気がするけど。

 ……何よ?

「少しは地図を頭の中に叩き込んでおけ」

 小言ですか。

「宇津木さんにお任せしまーす」

 ファインダーを覗きながら呟いて、そのまま空を見上げた。


 重なり合う緑の葉。

 光を通して明るい緑と、影となって映る濃い緑。

 それがとても綺麗。


「宇津木さん……」

「なんだ?」

「物事には……綺麗な面と、汚い面があると思うんです」

 沈黙が落ちて、カメラを下ろすと宇津木さんを振り返った。


「自然な風景と言うなら、自然が壊されている風景も……自然な風景です」

「ああ……」

「どちらがいいですか?」

 問うと、しばらく黙ったまま、宇津木さんはゆっくりとサングラスを外した。

「……仕事的には、綺麗な風景だな」

 真剣な視線が返って来て、微かに微笑んだ。

「だが……機械的にではなく、自然に壊れた緑も俺は綺麗だと思う」

 ああ。

 成る程?

「了解です」

「了解?」

「宇津木さんが求めてるのは、あくまで自然の摂理ですよね」

 ファインダーを再度覗き込み、光を調節するとシャッターを切る。

「ロマンティック~」

「馬鹿にしてるのかっ!?」

「ぶれちゃいますから、叩かないで下さいね~」

 舌打ちが返って来て、思わず笑った。


「いい度胸じゃないか」

「だって時間がないことだし、意見は出来るだけ頂かないと」

「……その点はたいして心配してない」


 おや。

 ちらっと見ると、苦笑が返ってくる。

「そこら辺の感性は、お前の方がいい」

 顔が赤くなったのが自分でも解った。


 いや、だって……

 ねぇ?

 褒められたわよっ!?

 今、間違いなく褒められちゃったわよ!


「お前、頭で考えないし」


 転びそうになった。
< 208 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop