シャッターの向こう側。
「ああ、ごめん。驚いた?」

 にこやかな有野さん。

 その笑顔に力が抜けた。

「あ、有野さん! 何故、そんな所に隠れているんですか」

 今、電柱の影にいましたよね!?

 確実にいましたよね!?

「心配だからに決まってるでしょう。こう言っちゃなんだけど、切羽詰まった男ってのは何するか解らないんだから」

「そ、そうですか」

「そういう所は抜けてるね。君は」

 有野さんはフッと笑いつつ、腕を離してくれた。

「駄目だよ~。男は野獣なんだから、女の子は気をつけないと」


 ……そうですか。


 一歩だけ離れると、有野さんはちょっとだけ傷ついた顔をした。

「俺は加倉井以外は襲わないよ」

「佐和子は襲うつもりですか」

 そう言えばさっき、サラっと何か言っていたな。

「うーん。そりゃ、男だもの」

 軽い、軽すぎますよ!

「佐和子では遊べませんよ」

 呟いた途端、頭をガシッと掴まれた。

「嫌だな。遊ぶつもりはサラサラないよ」

 口元は笑みを浮かべているけど……

 目が……

 目が怖いです!!

「す、すすみませ……っ」

「いや。いいんだけどね。加倉井にすら、本気にされてないし」

 頭が軽くなって、乱れた髪を直しながらちらっと見る。

 それはそれは残念な顔をしている。


 ……本気な訳なんだろうか。


 いきなりパチッと目が合って、笑顔が返って来た。

「とりあえず、駅でしょう?」

「あ。はい」

「じゃ、方向は一緒だから送るよ」

「ありがとうございます」

 スローペースで歩いてくれる有野さんにお礼を言いながら、ゆっくりと隣を歩く。


 季節は秋。

 それらしくすっかり冷たくなった風に身を竦めると、ふっと有野さんが車道側に回って来た。

「神崎さんは車道側は危ないね」

「それはどういう意味ですか」

「いつもフラフラしてるから」

 有野さんはバックを持ち直し、肩を竦める。
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