シャッターの向こう側。
「ごめん……」

 坂口さんは有野さんが歩いて行った方を見て、それから俯いて呟く。

 有野さんの言葉の意味は解らないけれど……

 今の坂口さんには、キツイ言葉だったのかも知れない。


 ちょっぴり少しだけ悔しいような、寂しいような……

 そんな表情の坂口さんを見つめた。


「…………」

 でもこれは……

 きっと、坂口さんが謝る事じゃないと思う。

 もとはと言えば、私が安易に返事をしてしまったからで。

 好きになれると思った。

 優しいし、いい人だし。

 でも……そう言う意味では好きになれなかった。

「私の方こそ……すみませんでした」

 頭を下げると、驚いた様な坂口さんが振り返る。

「君が謝る事は……」

「いえ。私が悪いんです」

 首を振ると、苦笑が返って来た。

「……本当に、お別れ?」


 本当に……

「ありがとうございました」


 とても嬉しかったです。

「……きっと、その言葉は俺には相応しくないと思うよ?」

 坂口さんは笑顔だけど、どこか遠くを眺めるように……また苦笑する。


 そして

「……さよなら」

 軽く手を振って、坂口さんは背を向けた


「…………」

 その背中に頭を下げる。

 私……嫌な人間だな。

 期待させるだけさせて、逃げ出してしまうなんて。

「本当にすみませんでした」


 呟いて、ゆっくりと駅に向かって歩きだした。


 過去を考えない訳じゃない。

 でも、今回は……

 自分に嘘はつきたくなかった。

 駅にもう少しという所で立ち止まり、溜め息をついた。


「お疲れ様」

「うきゃわ!?」


 バックを取り落としそうになって、慌てて腕を掴まれた。
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