シャッターの向こう側。
 宇津木さんて……

 我が道を突き進む人だよね。

 うん。

 何となく知ってた。

「会社近くの方が都合がいいって、こう言う事でしたか」

「いや。そうじゃない」

 そう言いつつ宇津木さんはメニューも見ずに、近づいて来た店員さんに茄子とトマトのチーズパスタを注文する。

「しかも、決めるの早っ!!」

「いつも来てるからな。お前は?」

「あ……」

 アサリのスープスパもいいし、ほうれん草のクリームスパもいい。

 ぅう~ん。

「ピヨ」

「はい?」

 あ~…でも、和風パスタも捨て難い。

「あっさり、こってり、スパイシー、とんでもない、どれがいい」

「あっさりですかね」

「じゃ、キノコの和風パスタで」


 あ、そんなバージョンもあるんだ。


 ……んん?

 パッと顔を上げたら、店員さんはにこやかに伝票の打ち込みを終え、戻って行くところだった。

「宇津木さぁん。私のまで勝手に決めないでくださいって、何度言ったら解るんですかぁ」

「一応、聞いた」


 そうじゃない。


 そうじゃないよ!


「ま、メニューくらい気にするな。どれでも旨いから」

 こんちくしょうめ。

 睨んでいたら、宇津木さんはメニューを取り上げ、それを脇のメニュー立に戻す。

「それで。行き詰まってきたか」

「…………」

 きゅ、急に本題っ!?

 宇津木さんはちらっと私を見て、目を細めると腕を組んだ。


「だいたい、そんな所だろう?」

「ちゃんとさっきの電話、聞いてたんじゃないですか」

 聞き流したとか言ってた癖に。

「さすがの俺も、起きぬけにお前の突拍子もない会話には付いていけない」

「どういう意味ですか」

「そういう意味だ」

 サラっと返されて、ちょっと目眩がしたわよ。

「だいたい、お前は余計な事をし過ぎる」

「何がですか」

「俺はディレクター兼ねてるのが多いが、グラフィックスだって解ってる?」

「そんなの当たり前……」

「そして、お前はフォトグラファーだって解ってるか?」


 何が言いたい。
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