シャッターの向こう側。
「デートなるものは、最近は全然ですが」

 だいたい、お付き合いしてる人もいないのに、どうしてデート?

「え? その写真は違うの?」

 と、言って今野兄が見た先は、なんと返してくれた写真。

「…………」

「神崎さん。とっても複雑な顔だよ?」

 そりゃそうでしょうとも。

 何故、よりにもよって……

「デートなんかじゃありません。仕事ですから」

「ああ。だから宇津木さんが全部後ろ姿なんだ?」


 今野兄が呟いた時、


「ぶほっ」

 宇津木さんが盛大にお茶を吹き出した。

「うわ汚いっ!」

 宇津木さんは咳込みながらも、慌ててデスクをティッシュで拭いている。

「突然……妙な事を言うからだろうが」

「私が言った訳じゃありません!」

 なんで私が睨まれなきゃならない。

「……ああ。それもそうか」

 てか、それで切り替えられても虚しいと言うか、なんて言うか……

「でも、ピヨが変な写真を撮るから悪い」


 結局私かい!

「だって、夕暮れなんて良い画が撮れちゃうんですもん! 仕事帰りはもう夕暮れどころか、真っ暗なんですよ!」

「冬も近いからね」

 今野兄はクスクス笑って、一枚の写真を抜き出した。


「これなんか最高じゃない? 真っ赤な空にシルエットになっている木と宇津木さんのバック。道筋にも影があって」

「あ。やっぱりそう思います? 私もそう思うんですよね」

「うん。カッコイイ」


 そう言って、今野兄は首を傾げた。


「でも何故……後ろ姿ばかりなの?」

「正面とか横から撮ったら、バレて叩かれます」


 それに、正面から宇津木さんを撮るなんて……


 そんな事は恥ずかしいと思う。


「あ~……。納得。仕事中は普段よりうるさいしね」

「お前らな……」

 不穏な宇津木さんの声に、今野兄は一歩離れた。

 って、こそっと私を盾にしてない?

「……いい性格してますね」

「これでも宇津木さんには散々殴られたからね」

 てか、誰にでもそうなのか?

「あー……。もう、うるさいからお前は加納の所に行ってこい」
< 266 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop