シャッターの向こう側。
 宇津木さんの声に、今野兄はニヤッと笑った。

「そっちのも見せて下さいよ」

「星空ばかりだぞ?」

「シンプルなんですか?」


 今野兄の言葉に、宇津木さんは写真を眺めて眉を寄せた。

「それは見方にもよるな」

 今野兄は手を伸ばして写真を受け取り、黙ってめくる。


 ……何か、妙に緊張するのは何故。


 思えば、他のフォトグラファーの人とあまり話した事がない。

 だいたいは皆出払ってるし、数人しかいないし……

 ……あの人達に、写真って見せた事がないかもしれない。

 確実にない。

 うん。

 絶対ないな。


 荒城さんは何も言わないし……

 と、すると、コンクールはともかく、これは同業者の意見が聞けるチャンス?

「ど……どう思います?」

「うん。宇津木さんが好きそう」


 はぁ?


 何を真剣に意味不明な事を言ってるの?

「宇津木さんて、直線よりも曲線を好むから」

「直線より曲線……ですか?」

「うん。女性に例えるならスレンダーよりもボンキュッボ……」


 ガコッと物凄い音がして今野兄がしゃがみ込む。


「…………」


 今野兄がいた空間に、息を切らした加納先輩。

 辞書を片手に立っている。


 ぇえと。


「暴力反対」

 と、呟いてみた。

「あのね神崎ちゃん。今のスルーしたみたいだけど軽くセクハラだから!」

 そんな、綺麗な顔で鬼の形相されても。

「あー……大丈夫ですよ。宇津木さんなんて人の事を肥えたとか普通に言ってきますから」

「神崎ちゃん! それは問題よ! すぐに人事課に駆け込まなきゃ」

 って……真剣に言ってるけど。

「本気でセクハラなら訴えますよ」

 それこそ、いやらし~い感じに言って来たなら、私もそれなりに考えたけどさ。

 眉を潜めた宇津木さんと目があって、微かに苦笑する。

「だって。宇津木さんて、異性に言ってるって雰囲気で言わないから」

 そして何故、思い切り顔をしかめるんだろう?
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