シャッターの向こう側。
 さすがに夜にもなると、レストランに人が流れてしまうのかカフェにいる人はまばら。

 少し落ち着いた照明の下、低いソファーがいくつも並んで空いている。

 その中でも中央の、少し明るめの席に座った。


「出来れば、こんな明かりの下じゃ見たくはないがな」

 そんな言葉に首を傾げる。

「部屋で見ればいいじゃないですか」

「それじゃダメ出し出来ない」


 ……しないでくれ、とは言えない。


「それに、見終わった写真をお前の部屋に持って行くのも面倒」


 なら、明日にでも、会った時に返してくれればいいじゃないか。


「最後に、時間が惜しい」


 あ。

 はいはい、なるほどね。

 バックから取り出したカラー写真の封筒を差し出す。


「どうぞ」

「……ん」

 宇津木さんが写真を見始めた頃、ウェイトレスさんが近づいて来た。

 私は慌ててメニューを開いて、ドリンクのコーナーを見る。

 ……でも、まだ夕飯食べてないのよね。

 考えていると、宇津木さんが近づいて来たウェイトレスさんに気がついて顔を上げる。

「こっちにカフェオレ。俺はブレンドで」

 そう言うなり、また視線を写真に戻す。

「…………」

 ……あの。

「勝手に選ばないでくれます?」

「どうせ同じの頼んだって、ガバガバとミルク入れるんだろうが」

 それはそうですけどね。

「私がお腹空いてるとは、考えない訳ですかね?」

「……よく食うな」

「……言っておきますけど、写真館帰りに待ち伏せしてた人のセリフとは思えませんが」

 ひょいと宇津木さんは顔を上げた。


「食って来てないのか?」

「……白黒の写真は、そうホイホイ現像できるものじゃないんです。方法もレトロなんで、乾くのにも時間がかかるんです」

 宇津木さんは溜め息をついて、カフェのカウンターに向かって片手を上げた。

 今度はウェイターさんが近づいて来る。

「ご注文ですか?」

「こっちに、トマトと茄子のクリームスパゲティーで」

「かしこまりました」

 去っていくウェイターさんを見送り、メニューを閉じた。
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