シャッターの向こう側。
「冷めてたじゃない、あんた」

「冷めてたかな?」

「そうよ。それに、坂口さんと付き合いがおかしいんじゃないかって相談してきていたし」

「それは何となく……」

 覚えがあるかも?

「それにその〝関係〟を、整理整頓出来た感じ、とかも言っていたわよね?」

 そんな事を言ったかなぁ?

「感覚で生きてるようなあんたが、頭で考えてるみたいな気がして、何かおかしいと思ったもの」


 と言うか……


「何だか色々と言われ過ぎて、頭がパンクしそうなので休んできたいと思います」

 持っていたグラスを有野さんに渡して騒がしい会場を抜け出した。

 会場を出た右側はクロークやトイレ。


 左側はふかふかソファーが置かれてて、灰皿なんかもある。


 誰も出て来てないのをいいことに、ソファーに座って……


 沈みかけた。

 背が低いと、たまにソファーに埋もれるんだよね。


「背が高い人ばかりじゃないのに」


 ブツブツ言いながらズレたベールを直して座り直した瞬間。


 人の話し声とざわめきが聞こえた。


 誰かが会場から出て来たのかな?


 と、見て、硬直した。


「司会お疲れ」

 そう言って出てきたのは坂口さんで。

「なんで俺がこんな事しなきゃならないんだ」

 そう言いつつ後ろから出て来たのは宇津木さんだった。


 ……なんとも間が悪くない?


 ちらっと二人はソファーの私を見て、奥に見えるテラスの方に向かう。


「祖父さんが幹事の時は、変な役が回ってくるから」

 そう言ってぼやいた宇津木さんの声は丸聞こえだけど。

「しょうがないんじゃないか? 会長が絡む時は親族で変な役するだろう?」

「今回は叔父が白鳥の湖を踊るらしい」

「……可哀そうだな、社長も」


 想像したらとっても可笑しいかも知れない。

 そう思っていたら、しばらく沈黙が落ちた。



 てか、あれだよね。

 二人の会話を盗み聞きしてるみたいだ。

 これは戻った方がいいかも知れない。



 そう思って立ち上がりかけた時、坂口さんの言葉に固まった。


「そう言えば、神崎ちゃん契約になったんだって?」


 私の事だった。
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