シャッターの向こう側。
 今日は何もしてないようなモノだけど、何となく充実したような気もする。

 結局、撮れたのは植物園だけ。

 ん~……

 まぁ、仕方ないな。

 自然が相手だと、どうしても時間がとられてしまうし。

 写真に手を加えてしまえば、どうにかなる仕事なんだけど、それは嫌。

 言われればするんだけど、合成とかはあまり好きじゃないし。


 見る人がみれば、すぐに見破られちゃうしね。


 ……そういえば、今回のフォトコンの写真は手を加えてはいないけど、納得出来るモノじゃなかったな。

 今から見ると、何かがしっくり来ない。

 それなら昨日撮った宇津木さんの白黒写真の方が出来栄えはいい。


 ……って、渡し忘れたな。


 私が宇津木さんの写真を持っていても、かなり仕方ないんだけど……

 あの人に渡すと〝いらない〟とか言って捨てられそう。


 それは惜しい。


 考えた末に出した結論。



 とりあえずばれなきゃいいや。



 これでいこう!

 よし納得!

 まずは荷物をテキパキと部屋に置くと、ちょっとだけバスルームに立ち寄る。

 いつも隣にいる暴力男はともかく、坂口さんと面と向かうなんて初めてだし。

 それなりの身だしなみは必要でしょう!


 ……って言っても、面倒だから髪を直すくらいだけどね。

 部屋を出ながら首を傾げる。

 同僚の女性カメラマンはキャップをかぶってる人も多いけど、何かいやなんだよな~。

 どうしてもカメラを構えた時に邪魔くさいし、暑いし、蒸れるし……

 私、髪が多いし長いから、縛ってしまった方が楽な時が多い。

 と言っても、別に女性らしい格好をしてる訳でもないんだけど。

 ……まぁ、格好は関係ないからいいか。

 だいたい打ち合わせに着飾る人もいないでしょ。

 エレベーターが来たので乗り込み、ロビーのボタンを押す。

 押して、ふとそのボタンに見入った。
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