シャッターの向こう側。
「熱は何度くらい?」

「38度」

「咳は?」

「治まった」

「頭が痛い?」

「痛くない──…少し黙らないか?」

 だるそうにまた横になって、目を瞑る。


 ……本当に辛そうだ。


「それで、有野さんからのは?」

「あ……はい」

 と、預かった封筒を差し出すと、寝ながらもガサゴソと開け始める。


 具合が悪い時くらい休めばいいのに。

 黙っていたら、大きな溜め息が聞こえた。

「また緊急の仕事?」

「……いや」

「何? なんて?」

 無言で封筒を返してくるから、受け取って中を見る。


 中には紙が一枚。

 紙には文字が一行。


『おつかえ出すから、看病してもらえ』


「…………」

「治ったら、仕返しを考えておくか」

 思わず吹き出した。

「有野さんて、いい人じゃないですか」

「どこがだ」

「いい人ですよ」

 私たちが付き合える様になったのも有野さんの一言のおかげだし。

 今回のコレにしても、この封筒がなければ、私は来ようなんて勇気はなかったし。

 宇津木さんだって、こんな状態なのに〝来るな〟なんて言ってたし。


「あの人は楽しんでいるだけだ」

「いい先輩じゃないですか」

 笑いながら荷物を持ち上げる。


「ところで、食欲はありますか?」

「……さっき食った」

「じゃ、コレは後にしますから、冷蔵庫借りますね」

「勝手にしろ」


 ……勝手にするよ!!

 投げやりに言わなくてもいいじゃないか!

 全く可愛くないなっ!

 食材を冷蔵庫にしまって、袋を畳みながら毒づく。

 言葉にしないだけ、私も社会性がついたもんだよね~。


 でも……


 可愛い宇津木さんて、想像も出来ないけど。

 おとなしくニコニコしてるとか、指をくわえて上目使いとか……



 いや────っ!!!

 気持ち悪いからっ!

 逆に恐いからっ!

 身の毛もよだつから!


「……何を暴れてるんだよ」

 いつの間にか起き上がっていた宇津木さん。

 それはそれは冷たい視線が突き刺さる。
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