シャッターの向こう側。
 さっきから解らないが、異様に心臓の音がうるさい。

 心臓の音で、まわりの音が耳に入らなくなってきそうだ。


 ……何をビビる必要がある。

 そんな事は、女子供のすることだ。


 軽く頭を振って、また奥に向かう。


 進んで行くと、壁が見えた。

 壁に沿ってペンライトを走らせ、それから眉をしかめる。


「何もない……か」


 小石どころか、ゴミすら見つからない。

 砂や土埃が固まるだけで、音がするようなモノは何も……


 思った瞬間、首筋に冷たいものが落ちた。


「………っ!?」


 何だ?


 首筋に触れると、指先に水が触れる。


 天井を照らすと、剥き出しの鉄骨や、作りかけの配線が見えた。


 窓はあってもガラスのない建物だ、上の階に雨が貯まって、それが落ちて来たのかも知れない。


 それ以外ないだろう?


 大きく息を吐いて首を振ると、階段がある事に気がついた。


 階段は繋がっているのか……


 足をかけると、今度はそこからパサパサと何かが振ってくる。

 思わず退いて、奥歯を噛み締めた。


 風で埃が舞っただけの話しだろう?

 怖じけづくなんてらしくない。

 俺が恐がってどうするっていう……

 そう思いながら、階段を上がって行く。



 二階部分は、四分の三しか壁がなかった。

 作りかけで終わっているのか……

 もしくはそもそも壁を作らずに、ガラスをはめ込むつもりだったのか……

 丁度、街側の壁だけポッカリと開けていて、壁際にはまだ階段が続いていた。

 フロアの中央に、放置されたらしい鉄筋や錆びた鎖が見える。


 ……何もないじゃないか。


 そう。

 何もない。

 何かがあると思っていたのか?

 埃だらけで何もないじゃないか。

 全く何も……



 水溜まりもないな……



 風が吹いて、物悲しい音が通り過ぎる。


 風が物悲しいなんて馬鹿げている。

 風に感情があるはずがない。

 あるはずが……



バサササ……



 今のは何だっ!?
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