シャッターの向こう側。
 坂口さんの軽い口笛の音にはっと我に返る。

 片手で両目を覆い、俯いている宇津木さん。


「やるねぇ。神崎ちゃん」


 いや、坂口さん。

 そんな問題じゃないでしょう?

 もしかして、もしかしなくても……

 目に当たった?


 てか……


 ……私ってば。


「ご、ごめんなさい! ご馳走様です! ついでに失礼します!」


 これは逃げるに限る!

 間違いない!

 謝り逃げだ!


 慌てて立ち上がり、



「うぐっ……!!」


 服の襟を掴まれて首が絞まった。


 それから肩から荷物を取り上げられる。


「それは言い逃げだろが」


 宇津木さんが、不機嫌そうに呟く。

 そして襟首を掴まれたまま、ソファーにつまみ戻された。


 ……この出張から返ったら、シャツ関係を着るのはやめよう。


「……えと。すみません」


 いくらなんでも、モノを投げちゃいけないよね。

 例え相手が、鋼のスライム並に倒そうと思うと逃げまくられ、その割に経験値がたくさん入りそうな、微妙にだらだらとムカつく男だとしても!


 って、私はゲーマーかっ!!


 例え話が、何故に某有名RPGな訳なのよ!


 いや、そうじゃない!

 そうじゃないのよ!!


「……ピヨ」


 ……て、この期に及んでも〝ピヨ〟なのか!?


「悪かったな。お前が一応女なのをよく忘れる」

「一応って何ですか! しかもよく忘れないでください!!」

 私のツッコミに、坂口さんがお腹を抱えて笑い出した。

 もちろん、宇津木さんの小言は続いた。


 なんて言うか……


 ……勘弁して。















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