シャッターの向こう側。

最終日……もしくはサプライズデー

******




「おはよう」

 いつもの通り、宇津木さんはブラックコーヒーを片手に目の前に座った。

 それから、ざっと私のお皿を眺める。

「……プレーンオムレツに、カボチャのサラダ、マッシュポテト、コーンスープにクロワッサン?」

 ……何よ。

「何か文句ありますか?」

 目を細めると、肩を竦められた。

「ない」

 ……どうせよく食うな、とでも言いたいんでしょうよ。

 宇津木さんは新聞を広げ、コーヒーを口にしつつポソリと呟く。


「見事に黄色だな」


「…………」


 そうきたか……っ!!

 ある意味では、デザイナーらしいじゃない!

 ……てか、あんたはフードコーディネーターかっ!!


 外を睨みながらオムレツを口に運ぶ。


「ピヨピヨ」

「なんですか」

「面倒臭いから、言いたいことがあるならハッキリ言ったらどうだ」

 新聞を目で追いつつ、宇津木さんはそう言った。


 それなら……


「ここのタマゴ料理は、バターの使いすぎじゃないかと思います」


「……お前は馬鹿か?」


 ……ん?

 いやぁ、今思った事を言ったまでなんだけど?


「……誰もそんな事は聞いてない。そもそも俺に言ってどうする、そんな事」

「そうですよね」

 あっさり頷いて、ミルクを飲んだ。


「て、二人とも、朝から冷戦はやめてほしいんだけど?」

 顔を上げると、困った笑いの坂口さん。

「おはよう、神崎ちゃん」

「おはようございます」

 てか、冷戦て何?

「喧嘩はさぁ。もっとホットにやってくれた方が、見てて納得するんだけど」

「別に喧嘩はしてませんが?」

 坂口さんは目を丸くして、私と宇津木さんを見比べる。

「……だな。普段通りだが」

「もしそうだとすると、一触即発な会話を普段からしてるんだね」

 それはどういう意味ですか。

 苦笑いする坂口さんが、プレーンヨーグルトのお皿をテーブルに置いて座った。

「ま、どっちにせよ、今日で出張もラストだね」

 日数的には今日も含めて2日だけど、明日の10時にはここを発つから、実質は最終日になる。

「まぁ、そうですね」
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