ウソ夫婦
成田空港。
大きなスーツケースを引っ張る人たちに混じって、あすかは緊張した面持ちで到着口に立っていた。
チェスターコートにブーツ。ブルーのストールを羽織る。
大人女子を演出中。子供っぽい格好なんて、ジェイの前でできないし。
あすかはちらっと自分の胸を見下ろす。それからそっと、心持ちいつもより大きなバストを、手の平で整えた。
ジェイに会うまでに、牛乳も、あやしい薬も、体操も試したが、もちろん効果があるわけじゃない。いろいろ悩んだ末、とりあえずちょっと見栄を張って「最新型寄せて上げるブラ」を購入してみた。つけてみると、なるほど谷間ができる。最新技術は素晴らしい。鉛筆も滑り落ちなかった。
なんとかこのブラを取られないようにする。誘導して、気をそらして……。
あすかはそんなくだらないことを考えた。
「あすか」
後ろから、ぎゅうーっと抱きしめられた。
「ジェイ」
あすかは驚いて、後ろを見上げた。
ジェイの髪があすかの頬に触る。
あすかは腕の中で向きを変えようとしたが、ジェイが強くそれを遮った。
「もうちょっと、このままで」
「……うん」
久しぶりのジェイの気配。
ジェイがあすかの耳の後ろに軽くキスをすると、あすかは「うひゃっ」と声を上げる。
「相変わらず色気のない声出してるな」
頭の後ろから意地悪な声が聞こえて、あすかは「もうっ」と頬を膨らませた。