子犬物語。
「?」

「お前……捨てられたな?」

 捨てられた?
 再び意味のわからない言葉に、あどけない瞳が答える。

「ぼくね、いちごと一緒に生きていくんだよ!」

「いちごぉ?」

 今度は猫のほうがいぶかしげに片方の眉を持ち上げる。

「うんっぼくの兄妹なんだ! 本当は他にもたくさん兄妹はいるんだけど、今はいちごしか側にいないから」

「………」

 いちごは女の子だからぼくが守ってあげなくちゃ! 小さな体で胸を張って答えるメロンを、静かな目が見返す。

「お前、野犬に襲われる前はどこにいた?」

「え? ぼくみたいに茶色の狭い箱の中だよ。だけどね、雨が降ったら簡単に破けちゃったんだ。それでぼく、外にでられたの」

 凄いでしょ! と無邪気に笑うメロンを見て、猫はあることを思い出していた。
 野犬に襲われていたこいつに出会う少し前、道すがら破れたダンボールの中でうずくまるようにして死んでいた子犬。
 ダンボールを突き破って出てきたという目の前にいるガキに、あまりにも似ていた。
 兄妹は生きていると信じきっている、こいつに。
 さて、この純粋無垢な瞳をしたこいつに、そのことをどう伝えればいいのか……。
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