子犬物語。
「お前がダンボールの中にいたとき、兄妹の様子はどうだった?」

「うー……ん?」

 首を傾げて思い起こす。

「動いてなかった」

 メロンが口を挟むよりも先に、猫が口を開く。

「違うか?」

「……うん。確かにぼくが側にいるときは動かなかったけど、眠ってるんだと思ってそっとしておいたんだ。起こしちゃったらかわいそうでしょ?」

 なんでそんなこと聞くんだろう? 不思議に思いながら猫の様子をうかがっていると、ガラス玉のような目を大きくしたり小さくしたりして落ち着かない。
 猫は顔に出てしまう焦りを隠すように、再びメロンの傷口を熱心に舐め始めた。そしてしばらくの沈黙の後、はっきりした声で、

「……その兄妹のことは忘れちまえ」

 冷たく聞こえる言い方だった。

 え……?
 いちごを忘れる?

 頭の中で言われたことを何度も繰り返したけれど、始めは理解できなかった。けれど、その言葉はじわりじわりと体の中に広がっていって……。
 納得のいかないメロンは猫に食って掛かった。

「なんで? なんで忘れなくちゃいけないの!? だって生きてるんだよっ!?」

 そこまでいってメロンの中に嫌な予感がよぎる。

「……生き……てるよね?」

 まさか。そんな。
 強烈な不安が襲い掛かってきて、メロンの小さい心は押しつぶされそうになる。
 全身から血の気が引いていくような感覚に襲われながら、すがるような気持ちで問いかける。 

「いちごは生きてるんだよね?」

「お前が側にいるときにすでに弱っていたんだろう?」

 小さく震える体。微弱な呼吸……。
 それらを思い出して、ブリキのおもちゃのようにぎこちなく頷く。

「じゃあいわなくてもわかるな?」

 メロンの心を気遣う優しい瞳を向け、力づけるようにその小さな頭に手を乗せる。

 いちごが……死?
 うそ……だよね? だってぼくの兄妹なんだよ!? 今まで一緒だった! これからだってずっとずっと一緒なはずなんだ‼

「っ……」

 動転して叫び声をあげようとしたメロンの口が、猫の手によって塞がれた。
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