ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
「…ランが、ジア様の前に降り立ったからですね。」
「…キースは迷っていたんだと思う。魔法を使えば、多分あたしをあの場から遠ざけることもできただろうし、キース自身に守る魔法をかけて、あんな火傷をする必要もなかった。人間よりも強いからそう簡単には死なないし、治るけど…痛みは人間と同じなの。治りが早い、だけで。」

 何度も何度も、傷だらけになった姿を見てきた。すぐに自分を犠牲にしてしまう人だから。

「…それで、キースを置いてここに来ちゃうんだもん。…ひどいよね、あたし。」
「ジア様…。」

 シラは唇を噛んだ。

「…どんどん新しい魔法を覚えて、誰かの役に立つ準備ができていくキースの隣に、周りの理解や目、とかそういう問題じゃなくて、あたしが立てないでいるの。何一つ、キースのためになることができていない。戦争が終わって2年近くにもなるのに、何も。」

 目指す国の姿は変わらないのに、目指す国を先導する自分に近付けない。

「だからね、…アスピリオに来て、びっくりしたよ。得たものも多い。目指すものへの階段は、きっとここにあったんだと思う。」
「ジア様…。」
「シラ。あなたにだけは、本当のことを言うわね。」
「はい。」
「…そろそろ、ここを出ようと思うわ。」
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