恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜


――そして、少し時間を遡った頃の法廷では。


「――弁護人。これ以上根拠のない発言を続けるようでしたら、退廷を命じます」

「根拠……根拠は……」


瑞枝の提出した証拠品に捏造の可能性があると指摘したものの、それを裏付ける材料を持たない桐人は、もう手詰まりの状態だった。


(時間稼ぎももう限界だ……まだか、津田刑事……!)


口ごもったままで発言をしない桐人に、裁判官もとうとう痺れを切らした。

ざわつく傍聴席をハンマーの音で鎮め、検察側に論告、求刑を促す。

しかし、瑞枝は迷っていた。

桐人のいう“証拠品の捏造”は確かに推測にすぎないが、何より自分自身が証拠品に疑いを持ってしまった。

このまま裁判を終わらせていいのか。真実が闇に葬られてしまわないか。

こんな形で相良桐人に勝って、自分は検事として胸を張れるのか――。


「……裁判官。ひとつ提案があります」

「なんですか?」

「弁護人の主張には、検察側も気になるところがあります。そして、ある人物を証人として呼び出せば、すぐに事実はハッキリします。つまり……検事長の倉田を、法廷で尋問すればよいのです」


瑞枝の突然の提案に、桐人は驚いていた。

彼女の態度や視線からは常に敵対心がにじみ出ていて、たとえ少しの疑問があろうとも、有罪判決をもぎとろうとするだろう。
……そう思っていたのに。

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