恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜
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【相良さんに、相談したいことがあります。帰国早々申し訳ないのですが、家に帰る前に事務所に寄って下さい。】
日本時間午後三時過ぎ。
桐人は成田で飛行機を降りると同時に、豪太からのそんなメールに気が付いた。
……帰国する日時を伝えて置くんじゃなかった。そう後悔しながら、すぐにスマホを操作して、彼が打った文章はこうだ。
【疲れてるからヤダ。別の日にして】
そうしてスマホをポケットにしまおうとすると、即座に受信音がして、豪太からの返事。
【お願いです! 明日、絶対に勝てそうもない裁判なんです! 相手はあの牧原検事で、いつか相良さんに負けたこと根に持ってるから、俺を目の敵にしてて……】
桐人は空港の通路で立ち止まり、はぁ、とため息をつく。
そして思わず、独り言をこぼした。
「……自分でなんとかしてくれよ」
上司が五年も離れた場所にいたのだから、頼りにせず切り抜けられる能力が自然に身に付くものではないのか。
けれど、困ったとき、豪太がこんな風に自分に縋ってくれることが嬉しくないかと言われれば、嘘だった。
(出来の悪い子ほど可愛い――っていうやつかもな)
桐人は長時間の空の旅で疲労がたまっていたが、結局は【了解】と返信して、懐かしい事務所に立ち寄ることにした。
自分がいなくなってから、豪太がどんな風にあの事務所を使っているのかも、少し興味があったから。