恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜
東京までは特急を使い、それからいくつか電車を乗り継いで、事務所の最寄駅に降り立った桐人。
五年前と変わった景色もあれば変わらない景色もあり、感慨深げに周囲を眺める。
そして、大きなスーツケースを転がしながら、事務所までの道をゆっくり歩いた。
段々と空ががオレンジに染まってきた頃、見覚えのある雑居ビルの前に到着した。
外壁は色を塗り直したらしく、以前の寂れた雰囲気が少し明るくなっていた。
それでも懐かしい気持ちは自然と湧いてきて、桐人は足取りも軽く、事務所のある二階へと階段へ上がって行く。
「……あれ?」
事務所の前まで来ると、桐人は立ち止まり、戸惑ったような声を漏らした。
ここは今、【中野法律事務所】であるはずなのに、ドアに書かれている文字は、五年前と変わらず、【相良法律事務所】のまま。
(まさか、面倒で変えてないっつーオチか?)
またしても豪太のことで肩を落としつつ、桐人はドアノブに手を伸ばす。
そして、ガチャリと扉を開けると同時に、耳に飛び込んできたのは、男女入り混じった、数人の大きな声。
「「おかえりなさい!」」
その直後、パン!パン!とクラッカーが鳴り、桐人の目の前を紙ふぶきがひらひらと舞った。
目を瞬かせて状況を確認しようと必死になる桐人の前には、三人の人物がいた。