恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜


「相良さん、びっくりしました?」


したり顔で桐人に近付くのは、五年前とほとんど変わらない(外見にもやはり成長が見られない)豪太である。

それから、彼の隣に立つのは嬉しそうに微笑んでいる女性。

黒髪のワンレンロングヘアの彼女はどこかで見覚えがあるような気がしたが、桐人はなかなか思い出せなかった。


「どちらさま……でしたっけ?」

「ちょっと! 署内イチの美人に向かってそれはないんじゃない?」


(しょない……? 所内……? 刑務所でこんな綺麗な犯罪者に会ったこと……)


そう言われてもピンとこない彼を助けるように、事務所のソファにどっかり腰かけた強面の男が口を開く。


「吉野、諦めろ。相良の記憶にお前はいないみたいだ」

「津田刑事……! ってことは」


やっと彼女が警察関係者だとわかると、桐人は一度だけ、病院で彼女と顔を合わせたことがあるときのことを思い出し、腕組みをして不満そうに立つ麻衣子に向かって、両手を合わせた。


「すいません、たったいま思い出しました、吉野刑事」

「遅いわよ。こっちはあなたをひと目見たときから“いい男ね~”と思って記憶しておいたのに」

「はは、それはどうも。……それにしても、どうして皆さんここに?」


三人の顔を順番に見て問うと、豪太が代表して答える。


「俺が呼んだんですよ。相良さんが五年ぶりに帰って来るから、ささやかなお祝いしましょうって」

「……そういうことだ。ほら、さっさと座れ。飲むぞ」


よく見れば、津田の前にある応接用のテーブルには、酒や惣菜や菓子が並んでいて、その中から缶ビールを手にした津田が、桐人にそれを差し出す。



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