恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜
「……りっちゃん?」
「ああ、ゴメンね。いや、今の夏耶に、こういう話はやめた方がイイかなとかおもっちゃって」
「こういう話って?」
「……まぁ、一種の恋バナ……かな?」
言いにくそうに口ごもる律子に、夏耶は目を丸くして瞬きを繰り返す。
「りっちゃん! カレシできたの!?」
「ちーがーうって。私の恋じゃなくて、夏耶のハナシ!」
少し苛立たしげにそう言った律子。
夏耶は少なからず動揺してどくんと心臓を鳴らした。
(だって……りっちゃんは知らないはずだよね……?)
運ばれてきたスムージーを口に含み、ごくりと飲みこんだところで、夏耶は平静を装って律子に話す。
「私……恋なんて、ここんとこご無沙汰だよ?」
「アンタって……ホント馬鹿。私が気づいてないとでも思ってたの?」
「……え?」
「今も昔も。……夏耶の頭ん中は俊平ばっかりでしょってこと!」
――どうして律子が知っているのか。夏耶は衝撃で言葉を失った。
高校時代も、それから後も、俊平のことを友達に相談した覚えはない。
唯一自分から打ち明けたことのある相手は、上司の桐人ただ一人だ。
「りっちゃん……なんで……」
「あのねー……親友ナメないでもらえる? そんなの二人を見てれば一目瞭然だってば。夏耶がいつまでもはっきりしないから、婚約者の話だってわざとしたんだよ?」
ま、彼女と会ったのは偶然だったけどさ。と、律子は悪びれもせず話した。