恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜
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俊平が勤める私立高校は、なだらかな坂の上にある。
この春入ったバスケットボール部の新入部員とともに、校外をランニングをしていた彼がその坂を上がると、校門の真ん前に駐車している迷惑な車を見つけて、走る速度を緩めた。
「――お前ら、先体育館戻ってろ。で、水分補給したら二年と組んで基礎練」
「はい」と野太い返事がいくつも返って来るのを背中で聞きながら、俊平は車の運転席に近付いて行く。
(誰の保護者だ……?)
校門の前に車を停められるのは困る。けれど、それをストレートに伝えると逆に難くせつけられて痛い目を見ることになる昨今の学校事情。
俊平はそれを思って憂鬱になりながら、けれど黙って見過ごすわけにもいかないと、運転席の窓ガラスをノックした。
「あのう、学校に御用でしたら、中の駐車場に――」
ゆっくり下がっていくガラスの向こうにそう言いかけた彼は、そこに知った顔を見つけて「あ」と間抜けな声を出す。
「ごめんねー、仕事中に」
イタズラっぽく笑って舌を出したのは、同窓会以来に会う律子だった。
「……なんでここに?」
「どうしても俊平に話したいことがあって来たんだけど、私ってどう考えても部外者だし、中に入れてもらえないよねーと思って悩んでたら、ちょうどよくアンタが来たってわけ」
「……話したいこと?」