阿漕荘の2人

サンタクロースの忘れモノ 3

紫子side

どうも後味が悪い


苦いような辛いような


れんちゃんと口論になってから2週間も過ぎた

いつも通りの日常が14日間

廊下ですれ違えば、挨拶もしたし
世間話をした

別に普通だったと思う


でも、なんかちゃう

むしゃくしゃする


あの日、彼が自分に言った言葉を思い出す

何度も反芻して、考える


れんちゃんは正しい


わかっとる

いや、実際はあの時だってわかってた


でも寂しい



自分の一番近くにいた彼が

離れていくことか?



その日、紫子は本屋のバイトに行っていた


時刻は午後7時

冬の夜は暗い、そして寒い


今夜は何を食べようか考える



帰りに駅前のスーパーに寄ろう


今なら割引きシールが貼られる



ダッフルコートのポケットの中でカイロを握る


街はクリスマス一色



赤と緑



あー2色やん



その時だった


道路側がガラス張りで外から中の様子が見えるレストランの前を通った時だ


雑誌で何度か紹介されて美味しいと話題のイタリアン レストラン

なぜ、中を見てしまったんだろう


後悔した


見なかったら見なかったで気になる癖に


窓際の一番奥の2人用テーブル



男女が向かいあって座っている



なぜ、男女か?



明らかに男女の区別が出来る服装をそれぞれがし、

なおかつ、小柄な男より更に一回り小さい女


女は窓の外を眺めている


テーブルにはパスタとコーヒーカップ


女は男に話し、口角を上げる


何を話しているかなんて
もちろん分からない


ただ、その男の背中は誰のモノかはわかる


赤いカーディガンに白のスカート
くるぶしまでのショートブーツ


ほっそりとした色白の腕


華奢な肩


その肩まで届くほどの落ち着いた茶色いカールした髪



首元に光るネックレス



綺麗なヒトだと思った
可愛いヒトだと思った



にこやかに笑い合う2人




もうこれ以上此処にはいてはいけない


もうこれ以上彼らを見てはいけない


危険信号はずっと前から鳴っている


立ち去ろう


そう思っても動けない



涙すら出ない


喉は渇ききっている



肩を誰かが叩く



振り向く



それは自分より背が高い男



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