指先からはじまるSweet Magic
私の日常を彩る極普通のサラリーマンでは、絶対にお目にかかれない。
フワッと遊ばせた栗色の髪や、ラフでカジュアルなのにお洒落な服。


それなりに年齢を重ねて大人になっても、どこか浮世離れした雰囲気はそのままで。
雑誌では、『極上の男から極上の癒しを』なんて見出しを背負って、アンニュイな表情を浮かべていたりする。


幼い頃の黒歴史を知っているからこそ、背筋がムズムズする感覚がどうにも慣れなくて……。
ますます圭斗を、遠い人って意識付けるしかなかった。


ところが。


大学時代からの友人が、人生をかけて臨むお見合いのヘアメイクを、どうしても圭斗に頼みたいと言って来た。
それがちょうど一年前のこと。


当然だけど、ヘアサロンに予約しようにも、圭斗は売れっ子だし、普通に話をしたんじゃ数ヵ月先まで予約が取れない。
それでも必死に頼み込まれて、私も断り切れなくなった。


迷惑がられるのを覚悟して、私は直接圭斗にお願いした。


数年振りに圭斗の家にお邪魔して、最後の記憶とは違う大人の男になった圭斗を前に、緊張しながら頭を下げた。


そんな私に、圭斗は嫌な顔一つせず、快諾してくれたのだ。
昔から変わらないふんわりした笑みを浮かべて。


そして。
私は、業界でも大注目を浴びる『イケメン美容師』に成長した圭斗の仕事振りを目の当たりにした。


私の友人をリラックスさせながら、美しく仕立て上げて行く魔法。
そして幸せに導いた圭斗の指に、手に。


私は、いつの間にか魅せられていたことに気付いた。
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