指先からはじまるSweet Magic
「里奈、相当ストレス溜まってるね。なんかもう、髪が可哀想になるくらい疲れてる」


そんな言葉と同時に、フッと髪に手を伸ばされた。
私の横の髪を一房軽く掴んで、目を細める圭斗の仕草に、思わずドキッとして身体を強張らせた。


「四国出張、結構ハードだったから……」


言い訳がましくボソッと呟くと、圭斗が小さな溜め息をついた。


「だろうね。しかも結構日に当たったろ。毛先が乾燥してパサパサになってる」

「はは……。ですよね」


胸のドキドキに気付かれないように、必死に平静を保とうと努力する。
それでも圭斗は、職業病ともいえる観察眼を向けたまま。


「せっかく綺麗な髪してるんだからさ。勿体無いよ」


色素の薄い茶色い目が、私を……と言うより私の髪をとても愛おしそうに眺めているから、思わずドキッとしてしまう。


特に暑くもないのに、頬が火照るのを感じる。


そりゃ、圭斗は仕事柄女の子の髪に触れ慣れているし、私だって圭斗の好意に甘えて、プライベートの時間に何度も髪を洗ってもらっている。
可哀想なくらい痛んだ私の髪が不憫で仕方ないからこその行動だともわかっているけど。


それでも、こんな風にジッと見つめられたら……。


「おいで、里奈」


その上、圭斗はそう言って立ち上がった。
圭斗の手から零れた私の髪が、フワッと肩に降りて来る。


「最近サロンで使い始めたトリートメント、割と好評なんだ。久しぶりに、やってあげるよ」


そんな圭斗のあまりにも魅惑的なお誘いに、私は抗うことも出来ないまま、圭斗の家のバスルームに足を踏みこんで……。
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