指先からはじまるSweet Magic
「ありがとうね、市川君。助かった」


オフィス近くのちょっと名の知れたうどん屋さんに入った。


「ありがとう、はいいけど。良く考えたら、青木昨日まで四国だったよな。うどんで良かったのか?」

「……さすがに、長谷さんと二人っきりで向かい合って食事は避けたくて。ずっとコンビニ通ってたの」


小さなテーブルに向かい合って座って、私は肩を竦める。
コップの水をごくごくと一気に飲み干してから、市川君は軽く視線を宙に彷徨わせた。


「長谷さん、青木狙ってるの見え見えだもんな。そこまで避けるってことは、青木は全然その気ないんだろ?」


どストレートに尋ねられて、私はただ微妙に頷いて見せた。


「それじゃ、こういう時は、能天気で既婚者の同期が間に入るに限る」

「……感謝してます」


苦笑しながら市川君の左手の薬指を眺める。
そこには、シンプルだけどセンスのいいマリッジリングが光っている。


圭斗にヘアメイクをお願いしてお見合いを成功させた親友の香織も、半年前に結婚したばかり。
市川君も、一年前に営業部に異動して来たタイミングで結婚したって聞いた。


そういう年齢なのかもしれないけど、私の周りはここ数年で結婚ラッシュだ。
その上、もしかしたら圭斗も……なんて予感が脳裏を過る。
と同時に、昨夜のことまで鮮明に蘇って来た。
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