指先からはじまるSweet Magic
意志に反してカアッと頬が熱くなるのを感じて、私は慌ててお水を飲んで誤魔化した。


「ん? どうかしたか?」


真向かいに座った市川君は、こういう時、割と人の変化に目ざとい。


「いや……。きょ、今日も暑いねっ」


半分の量に減ったお水のグラスをテーブルに戻しながら、私はヒラヒラと手を翳して生ぬるいわずかな風を自分に送った。


「だな。今日の最高気温、確か三十八度だってさ」

「体温の方が低いんだもんね。のぼせちゃう」


ほおっと口を丸く開いて息をつく私をクスクス笑いながら、市川君は軽く左手を上げて店員を呼ぶと、お冷のお代りを頼んでくれた。


「……で? 青木が今日ずっとボーッとしてるのは、朝から熱中症気味だからってわけじゃないだろ」


テーブルに頬杖をついて、市川君はちょっと意地悪に上目遣いの視線を向けて来る。
探られる感覚に、思わずギクッと身体を強張らせた。


「なんかお前、俺と向き合ってからずっと俺の左手ばっか見てるし……」

「えっ!?」


そんなにガン見してたか!?と、私は慌てて目線を逸らした。
そして気付く。
今この瞬間まで、確かに私、市川君のリングばっかり見ていた。


「何? 青木も、そろそろ結婚したいなあ~、とか思ってる?」

「ち、違うよ」

「ま、お前の場合、まず相手を捜さなきゃいけないってとこか」
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