指先からはじまるSweet Magic
『どうして?』


私がここに来た理由に納得したように見せかけて、まだ私の真意を見付け出そうとしている。
それを痛いくらいに感じたから。


「だって、圭斗が全然帰って来ないからっ……」


私は花束をギュッと胸に抱えながら、圭斗にぶつけるようにそう言った。


「ちゃんと話したいのに、どうしていいかわからなかったから……」


いい匂いがする花束に、そっと顔を埋める。
芳しい香りに包まれて、それだけで気持ちが少しだけ穏やかになってくれる気がした。


「……髪」


小さく、掠れた声を漏らす。
え?と圭斗が短く訊ね返して来た。


「最後にここで、切って欲しかったの」


思い切ってそう呟くと、圭斗の困惑した声が返ってきた。


「え? ……でも、今日の予約入ってなかった……」

「う……」

「って言うか、今まで俺がどんなに言っても、切らしてくれなかったのに」

「……」


冷静に疑問を繰り出す圭斗に、私はグッと言葉を飲んだ。
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