指先からはじまるSweet Magic
さっきまでの鼓動とはちょっと違う、穏やかな昂りを感じて、私は膝の上でギュッと手を握り締めた。


「……明日」


圭斗の方が先に掠れた声を漏らした。
目を上げて聞き返す私の目の前で、圭斗がフワッと笑う。


「一緒に住むこと、二人で里奈の親に報告しよう」

「……圭斗」

「それで……。出来れば明後日には、里奈の引っ越し済ませたい」

「あ、明後日……!?」


あまりに急いた圭斗の言葉に、思わず目を丸くする。
圭斗はわずかに唇を尖らせて、いいだろ、とそっぽを向いた。


「俺、次の週末は神戸で研修の講師の仕事あるし。その次になると、もう待てない。……早くこの続き、したいから」

「っ……」


あまりにリアルに向けられた圭斗の欲情を全身で感じて、私の方が言葉を失った。


綺麗な顔を赤らめて、男の本能を惜しみなく私にぶつけて来る圭斗に、ただ心臓が高鳴る。


そんな際どいことを言いながら、今、圭斗が必死に理性をにしがみついて、余裕を保とうとしているのが感じられて……。
私はただ、必死に首を縦に振った。


獰猛な牙を隠した猫の姿。
そこに本当の圭斗を見つけた気がして、むず痒く感じるくらい新鮮な気分だった。


そして、自分の本能と葛藤しながら、今流されずに、私に触れない選択をした圭斗に……。
私の胸に、淡く柔らかい感情が沁み渡って行くのを感じた。
< 92 / 97 >

この作品をシェア

pagetop