指先からはじまるSweet Magic
先に廊下を歩く圭斗の後についていく。
玄関で靴を履いた圭斗が、あのさ、と短く呟いて、私を振り返った。


「早目に帰って来て、風呂入ってゆっくりして……」

「? ……うん?」

「そしたら……続き、してもいい?」


あまりにサラッと言われたせいで、一瞬どう反応していいかわからなかった。


「……えっ!?」


一拍遅れて、思いっ切り目を丸くして圭斗を見つめる。
黙って見つめ返されて、怖いくらい胸が高鳴り始める。


「じゃ、行こっか」


私の反応を最後まで目にして、圭斗はクスクス笑いながらドアを開ける。


「け、圭斗っ……」


惰性で一緒に外に出て、ドアの鍵を締める圭斗を見開いた目で見つめた。
圭斗はそれ以上何も言わずに、先にエレベーターに向かって歩いて行く。


そして。
廊下の途中で足を止めて、ゆっくり私を振り返った。
動けずに立ち尽くす私に、その綺麗な手を差し伸べる。


「里奈、おいで」

「……っ……」


圭斗はわかってない。


この手が、指が、いつも私にたくさんの魔法を与えてくれるってことを。
だから、こんな風に手を伸ばされたら、私はその手について行くという選択肢以外、何も選べなくなる。
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