アサガオを君へ
その瞬間、夏樹が立ち上がった。


私は栄治から夏樹に視線を移す。


無表情で私を見つめたあと、運動用の靴のかかとを潰して歩いていく。


私は夏樹を見たまま、栄治にペットボトルを渡す。


「お茶ね。私は行くから2人ともゆっくりしてて」


そう言い残して、私は小さなポーチとお水が入ったペットボトルを持って夏樹が消えていった方向に駆け足で追いかける。


養護テントをチラッと見たけど、夏樹はいなかった。


なら…。


私は渡り廊下から靴を脱いで、先生にバレないことを祈りながら保健室に向かう。


保健室のドアはうっすらと開いていて、私は音を立てないようにあける。


案の定、1つだけカーテンが閉まっていた。
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