アサガオを君へ
「夏樹」

少し小さく呟いた。


返事はない。


「夏樹」


少しだけ大きく、でも必ず聞こえる声で呼んだ。


返事はない。


私は夏樹のいるであろうカーテンまで行って、カーテンをキュッと掴んだ。


そして最初よりも、もっともっと小さな声で呼んだ。


「夏樹」


「…心」


やっと帰ってきた返事に安堵して、私はシャッとカーテンを開く。


夏樹はベッドに腰掛けて私を見ている。


私はじんわりと額に汗が滲むのを感じた。


もうすぐ夏は終わるのに、まだ暑い。


なのに、夏樹は暑いそぶりも見せない。


私はカーテンを閉めて夏樹の手を握る。


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