アサガオを君へ
「心。あのさ…」


「なに?」


夏樹は私の少し乱れた髪に触れながら言った。


「俺。卒業したら、海外に行く」


私は黙り込んだ。


卒業しても、夏樹はすぐ死ぬわけじゃない。


死ぬ瞬間までいればいい。


でも、何でかな。


何故だかそんなこと一度も思わなかった。


高校を卒業したら夏樹は遠くに行っちゃって、私もこの街を出るって。


何でだか理由もなく、そう思ってた。


こんなに一緒にいるだけで涙が出るほど幸せで。


どうしようもなく愛おしいって思ってる。


だけど、夏樹の最期まで一緒にいるって選択が頭をよぎったことはない。


何でなのか、分からなかった。


今でも、その理由が見つかってない。
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