アサガオを君へ
外に出るとヨウチンにバトンを手渡された。


「別に本気で走れとかは言わないから。悪いな、本当に」


私は靴紐を結び直しながら、ハッキリと聞こえるように言った。


「ううん。大丈夫。私、本気で走るよ」


「…そっか」


私はヨウチンの顔も見ずに、すでに整列している場所に歩いて行った。


アンカーの橋本さんと目があった。


橋本さんは腕を組んで、不機嫌そうに私から目を逸らした。


そんな橋本さんを気にすることなく、私は列の一番前に並んだ。


まるで私のことを待っていたみたいに、入場の曲が流れた。


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