アサガオを君へ
夏樹は何も言わず、私から目を離した。


開け放たれた窓の外の方を見ている。


すると、どんどん夏樹は遠くなっていった。


すごく遠くなって、どんどんと消えていく。


「夏樹!!!夏樹、待って!!!」


私は必死に手を伸ばしたけど、当然届かない。


ベッドを降りて追いかけたいのに、まるでシートに足が縫い付けられたみたいに動かない。


ぽたぽたと涙は落ちていく。


もう、夏樹は見えなくなってしまった。


私はどうしようもない役立たずだ。


手も届かなければ、追いかけることもできない。


夏樹が見えなくなっても、涙をこぼすことしかできない。


何てだらしなくて、役立たずで、ダメな奴なんだろう。


私はギュッと目を閉じた。
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