坂道では自転車を降りて
「その右手、どうするんだ。」
「どうって?」
 よく見ると、彼女の右腕にはまだ手首や肘に血の跡が残っていた。どうしたことか、腕まくりをした肘のあたりに沢山の血が付いていた。左手の血は保健室で拭き取ったが、右手はみてもいないらしい。

「肘も切ったのか?」
「あれ、本当だ。でも痛くないよ。」
「洗ってみよう。手をだせ。」

 彼女は少し戸惑ったがおずおずと右手を出した。俺は彼女の右腕をとり、袖を多めにまくりなおして、流しで洗うことにした。並んで流しに立ち、彼女の右腕を掴んで水道の下に持って行く。

「いてて。」
彼女が俺の背中にしがみつく。柔らかい感触にドキッとする。
「や、やっぱりこっちもどこか切れてるのか?」
「神井くん、乱暴だよ。そんな風にひねったら痛いよ。」
「あ、ごめん。」
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