坂道では自転車を降りて

「でも、物語上、必要だからあるんだ。短いからこそ、その一秒の演技で、舞台の出来上がりが違ってくるはずだ。」
「脚本家って、役者にインスピレーション受けて、脚本書くこともあるんでしょ？私そういう女優になりたいの。」

　言いながら突然、美波は俺の腕を引っ張った。上目遣いの目がうるうると揺れている。腕が胸に押し付けられる。あまりの気持ち悪さに、思わず身震いがした。一応美人の部類に入る顔に、この胸だ。男子なら皆この状況をうらやましがるだろう。だが俺はだめだった。どうもこの手の女子は生理的に受け付けないらしい。

「。。。。。俺に言われても。」
「私　どう？」
「ごめん。無理。」
「無理って？」
「その、、、胸が、、生理的にダメみたい。。。」
あまりに正直に口から出てしまい、フォローのしようがなかった。彼女はしばし、唖然としていた。おれは、腕に抱きついた彼女を振りほどき、気を落ち着かせてから言った。