坂道では自転車を降りて
「ねぇ。俺の事、どう思ってる?」
「すごいなぁって。結局書いちゃったよね。。尊敬してるよ。」
 真顔で言われて面食らう。『尊敬してる』なんて言葉がするっと出て来たことに感動した。『好き』よりずっと貴重でずっしり重い。でも、今俺が欲しいのはそう言うんじゃなくて、もうちょっと、恋人っぽい言葉なんだ。

「あ、ありがとう。。。いや、そうじゃなくて、好き?」
「。。。。うん。」
「ちゃんと言って。」
「。。好きだよ。」
もじもじしながら言う。『尊敬してる』は真顔で言えるのに、『好き』は照れくさいのか。紅くなった顔が可愛い。

「君でいっぱいになりたいな。君がしてくれる?」
「何を?」
「それは君が考えて。俺を君でいっぱいにして。」
 彼女は頬を染めたまま、困ったような、戸惑うような、それでいて笑っているような、複雑な表情で俺をみた。
「キス・・・したらいい?」
「どうぞ。やってみて。」

 考えてみたら、俺からキスしたことは何度もあったけど、彼女からキスしてもらったことってあったかな?どうするのかと思って見ていると、彼女は僕の頬に手をおいて、伏し目がちにゆっくりと顔を近づけて来た。俺が目を閉じるのを待たずに、自分だけ目をつぶって、唇にそっと口づけた。
すぐに恥ずかしそうに俯く。すごく可愛いけど、物足りないし、もっと困らせてやりたい。俺にはもっと激しくとか言ってたしな。
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