坂道では自転車を降りて
「まさか、これだけじゃないよね? かえって怒りが増しそうなんですが。。」
 挑発すると、彼女は俯いたまま、目だけで俺を睨んだ。
「ちがいます。」

彼女はムッとした顔で立ち上がると俺の膝の間に立った。そして、俺の顔を掴んで正面から見据えて聞いた。
「ここ、公園ですが、、よろしいですか?」
ちょっとムキになってるな。どこまでやるのかな、面白いので続けてもらおう。
「俺は、よろしいですよ。」
あたりはもう暗い。覗き込まなきゃ、何をしてるかなんて分かりゃしないだろう。

 彼女は俺の額に頬に、キスを落とし始めた。恥ずかしそうに、でも一所懸命な表情で、俺の唇を吸い上げる。
「んっ」
唇を吸っては離れ、耳たぶを甘噛みしては吐息を漏らし、また唇に戻った。冷たい指先は額にかかる髪や首筋をなぞり、肩や胸に触れる。彼女の髪の毛が頬を鼻先をちらちらとかすめてくすぐったい。うわ、結構上手いじゃん。
「神井くん。」
かすれた声が耳元で小さく響く。目眩がしそうだ。ベンチに置いたままの俺の手に力が込もる。

「大好き。」
囁かれると、全身がぶるっと震えた。
「理士。」
やばい。頭がぼーっとする。
「多恵。」
思わず名を呼んでいた。
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